特定非営利活動法人
国際生命科学研究機構

特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構(ILSI Japan)は1981年に設立され、ILSIの一員として世界的な活動の一翼を担うとともに、日本独自の問題にも積極的に取り組んでいます。

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最近の活動
  「ベトナム農村地域における母親の離乳食作り啓発支援事業」
 第21回国際栄養学会議にてポスター発表
       
     ILSI Japan CHPとベトナム国立栄養研究所が、2014年4月から2017年3月までAIN (Ajinomoto International Cooperation for Nutrition and Health)の資金を受け共同で実施した「ベトナム農村地域における母親の離乳食作り支援事業」で収集したデータを解析し、その結果を、2017年10月にブエノスアイレスにて開催された第21回国際栄養学会議にてポスター発表しました。
 この発表の主な内容は、次の通りです。村の保健所が提供する6-23ヵ月の乳幼児の低栄養対策プログラムとして、地域ヘルスワーカーが、乳幼児を持つ母親を対象に、様々な啓発活動を実施しました。具体的には、拡声器による定期的な情報提供、料理教室の開催、紙芝居式教材用いた家庭訪問による情報提供等です。そして、これらの啓発活動の結果、母親が栄養バランスの良い衛生的な食事を子供に与える事が出来るようになったかを、次の6つの指標を用いプログラムの前後で評価しました:?食事多様性、?食事頻度、?食事多様性と頻度の総合指標、?石鹸を使った手洗い(子供)、?石鹸を使った手洗い(母親)、?母親の食品衛生行動。ベースライン調査には、329組の母子、評価調査には376組の母子が参加しました。両調査において異なる対象者をランダムに選ぶ事で、村に住む6-23ヵ月の対象者に低栄養対策プログラムが行き渡ったかを確認する調査設計にしました。その結果、食事多様性、食事多様性と頻度の総合指標、石鹸を使った手洗い(子供及び母親)の指標において改善が認められ、村の乳幼児に保健所の栄養サービスが行き届いていることが確認できました。さらに、2つ以上の啓発手法を組合せる事で、栄養バランスの良い衛生的な食事作りが行われる傾向にあることも確認できました。
   
国際栄養学会議のポスター セッションの様子
     
     
   
   
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これまでの活動
    ベトナム:公共水道水の供給が今後も見込まれていないベトナム北部の農村地域に着目し、2001年からベトナム国立栄養研究所(NIN)と共同で、ProjectSWANを実施しています。ProjectSWANでは、水質検査や水処理施設の運転を担当する技術グループと、栄養・保健衛生に関する情報提供活動を担当するIECグループ(InformationEducationCommunication)が相互に協力し活動を進めています。事前調査を経て2005年からは、6年間にわたりJICA草の根技術協力事業(草の根パートナー型)から支援を得、ハノイ、ナムディン省において、安全な水の供給と栄養・保健環境の改善事業フェーズ1(2005−2008年)及び、フェーズ2(2010−2013年)を実施しました。フェーズ1では、3か所の村において、水管理組合による安全な水の供給、栄養・保健環境の改善などコミュニティーレベルでの成果を得ました。フェーズ2では、中央政府及び地方政府の水・保健分野の横断的な連携を強化し、16か所の村において、コミュニティでの活動実践・維持能力の向上を図りました。このプロジェクトにより、12万人が直接の恩恵を享受しています。また、2013年からフェーズ3を開始し、ハノイとナムディン省において、省の行政機関が実施する保健・水供給プログラムへの導入・実行を図っています。さらに、2014年からは、味の素「食と健康」国際協力ネットワーク(AIN)の支援を得、ターイグエン省とバクザン省において、栄養分野に焦点を当てた「ベトナム農村地域における母親の離乳食作り啓発支援事業」を実施しています。
インドネシア:2013年来、ILSI東南アジア地域支部と協力し、インドネシアにおけるProjectSWANの実施を検討しています。
     
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    ベトナム
パートナー:ベトナム国立栄養研究所
        National Institute of Nutrition (NIN)
    状況調査1 (2001年-2004年)
レッドリバーデルタ地域において、1年間の飲料水源の水質検査(2001年11月〜2002年10月)を行い、18項目の水質を検査した結果、アンモニア、砒素、鉄、一般細菌、大腸菌が、ベトナム政府の水質基準を上回っていました。その後の実験により、既存の水処理施設の運転を最適化することで、ベトナム政府の基準に見合う水質に改善できることが確認できました。
2004年には、フォーカスグループディスカッションにより、コミュニティーのニーズ調査を実施したところ、安全な飲料水の利点、水処理施設の水の水質、水処理施設の役割、飲料水管理の重要性について、住民の理解度が低いことが分かりました。また、水質の改善・維持に積極的な参加意思を示していることも確認できました。

SWAN フェーズ1: 住民参加による安全な水の供給と栄養・保健環境の改善プロジェクト (2005年11月 - 2008年11月)


事前調査の結果を基に、「住民参加による安全な水の供給と栄養・保健環境の改善プロジェクト:フェーズ1」をJICA草の根技術協力事業(草の根パートナー型)に提案し、3年間にわたりプロジェクトを実施するための基金を得ました。2005年11月から、レッドリバーデルタ地域にある3ヶ所の村(タンヒエップ(ハノイ)・ダイモ(ハノイ)・クワンチュン(ナンディン))にて、各村落内にある既存の水処理施設から飲料水の供給を受けている約2500世帯を対象に活動しました。村では、水管理組合が発足し、水質検査や水処理施設の運転を担当する技術グループと、栄養・保健衛生に関する情報提供活動を担当する啓発グループが相互に協力し活動を進めました。プロジェクトの成果として、食品衛生、乳幼児食の与え方について住民の知識、及び行動に改善が認められ、子供の下痢、栄養不良が減少しました。また、水処理施設の改造工事、及び運転指導により、ベトナム政府の水質基準を満たす水質が確保され、水量も増加しました。水管理組合は、適正な水料金の徴収と漏水対策に取り組むことで収入が増加し、経済的に安定したため、自立的な運営ができるようになりました。このプロジェクトは、2008年11月に大きな成果を得て成功裏に完了しました。
 ›最終報告書はこちらから
 ›成果発表 (1), (2), (3), (4)

状況調査2 (2010年-2011年)
地方給水と衛生に関するナショナルプログラムでは、保健省予防局と農業農村開発省地方給水センターが連携し、啓発活動を通して衛生環境を改善することが戦略の1つとして盛り込まれています。また、国家栄養戦略2001−2010では、ベトナム人の栄養状態を改善するために、安全な飲料水の供給、食品衛生、環境衛生活動が重要であるとしています。
近年、ベトナムでは、安全な飲料水の供給と国民の栄養状態について、顕著な改善が見られています。農村地域において、安全な飲料水の供給率は2000年には30%でしたが、2005年には62%に、2010年には75%にまで増加しました (5)。しかしながら、依然として農村人口の約30〜40%は、"改善された飲料水源"(WHO/UNICEFの定義による)からでさえ、不衛生な水を飲んでいるという危険性も潜んでいます (6)。また、2007年までに農村地域に建設された水処理施設は8,300個にも上り、約3500万人(農村人口の40%)がこの水を使っているとされています。このような水処理施設から供給される水の水質も懸念されていますが、問題点を整理し、解決する現地の人材育成についてはまだ取り組む余地が残されています。さらに、ベトナムの5歳未満の子供の栄養不良の割合は、1990年に45%でしたが (7)、2000年には33.8%に、2010年には17.5%にまで減少しました (8)。しかし、飲料水、食品衛生、乳幼児食の与え方に関する知識については、更なる改善が必要です。SWAN1の成果と課題、及び新たな状況調査から、プロジェクトの持続性を高め、より多くの人々が恩恵を受けられるようにするために、省、郡、コミューン(村)の人材を育成することが不可欠であると確認されました。

SWANフェーズ2: 地方行政機関の能力向上を通した安全な水の供給と栄養改善プロジェクト (2010年4月- 2013年3月:現在継続中)


2010年4月から、SWANフェーズ2を開始しました。フェーズ2の目的は、対象地域の地方行政機関の能力開発を通じて、安全な水の供給及び栄養改善に関するコミュニティー支援の仕組みを定着させることです。このプロジェクトは、SWANフェーズ1の成果、課題、現状調査2を踏まえ、JICA草の根技術協力事業(草の根パートナー型)から基金を得て実施しています。対象地域は、フェーズ1の対象地域を核として、新たに選ばれた16ヶ所の既存の水処理施設がある村です。地方行政機関の人材を育成するために、ワーキングチーム(中央政府:農業農村開発省地方給水センター及び保健省予防局から構成)とILSI Japan CHPの専門家が協力し、サポートチーム(地方行政:省及び郡の保健、給水センター、人民委員会)に対して、技術支援とトレーニングを実施しています。そこで育成されたサポートチームが、村の水管理組合と共に技術プログラムと啓発プログラムを実施し、住民レベルでの安全な飲料水の供給と健康増進に努めています。このプロジェクトを通して、分野横断的な連携と人材育成がプロジェクトの持続性を確保し、住民約11万人が恩恵を受けることが期待されています。


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    インドネシア
パートナー: Southeast Asia Ministries of Education Organization
        (SEAMEO)
    状況調査 (2011年)
To be up-dated
記事掲載
  JICA 地球ひろば
草の根技術協力事業「キレイな水で人々の健康を守る!」
     
  愛知県下水道科学館 世界の水と衛生展
2012年11月〜12月24日
JICA's World No.47(2012年8月発行)に掲載された
Project SWAN「キレイな水で人々の健康を守る」パネル展示
       
  JICA's World 2012年8月号 特集 水と衛生 一滴の重み
 「みんなの力で世界の水を守る(PDF)」
       
  厚生労働省委託事業「MDGs達成に向けた分野間連携に関する検討報告書」:社団法人国際厚生事業団2012年
       
       

成果発表
1 
Takanashi, et. al., Survey of food-hygiene practices at home and childhood diarrhoea in Hanoi, Viet Nam, J Health Popul Nutr. 2009 Oct;27(5):602-611.
2 
Takanashi, Safe Water Supply - A Community Approach in Vietnam with Project SWAN 5th Asian Conference on Food & Nutrition Safety "Science-based Solutions - Sustainable Actions", 6 November, 2008, Cebu, Philippines, Oral presentation.
3 
Jimba, Bottom up facilitation to improve water management in Vietnam, Community Development Journal, London, United Kingdom, September 2009, Oral presentation.
4 
Takanashi, et. al., Improved food selection of mothers on complementary feeding practice in Vietnam, 41st Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health (APACPH) Conference, 3-6 December, 2009, Taipei, Taiwan, Poster presentation.
 
参照
5 
CERWASS, 2006, National Target Program for Rural Water Supply and Sanitation.
6 
MOH/UNICEF, 2011, Study on the correlation between sanitation, household water supply, mother's hygiene behaviours for children under 5 and the status of child nutrition in Vietnam.
7 
Khan et. al., Reduction in childhood malnutrition in Vietnam from 1990 to 2004. Asia Pac J Clin Nutr. 2007,16: 274-278.
8 
.National Nutrition Strategy, For 2011-2020, with a vision toward 2030.



Project SWANの活動に寄付、賛助及びご協力を頂いている
企業及び団体
    (五十音順)
    株式会社 荏原製作所(ベトナム)
外務省
独立行政法人 国際協力機構(JICA)

  サイエンティフィック アドバイザー
    東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室 教授 神馬征峰
水処理専門家 竹花 努
     
ILSI CHP Japanの活動は公衆衛生上の課題に対する社会貢献活動です。この活動をご支援いただいている関係各位に感謝いたします。
その他、ご関心をお持ちの多くの企業及び団体のご参加をお待ちしております。
   

 

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(2018年5月)

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