特定非営利活動法人
国際生命科学研究機構

特定非営利活動法人 国際生命科学研究機構(ILSI Japan)は1981年に設立され、ILSIの一員として世界的な活動の一翼を担うとともに、日本独自の問題にも積極的に取り組んでいます。

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食品安全研究会 食品安全調査研究部会

食品中のアクリルアミドに関する情報


アクリルアミド問題の経緯
アクリルアミドとは
FAO/WHO合同専門家会議の報告書要約
アクリルアミドに関する日本及び各国の情報



1. アクリルアミド問題の経緯

2002年4月、スウェーデン国立食品局(The Swedish National Food Administration: NFA)は、ストックホルム大学(Stockholm University)との共同研究により、120℃以上の高温で加工・調理された炭水化物を含んだ多くのタイプの食品(ポテトチップス、フライドポテト、ビスケット等)から発ガン物質の可能性が高いとされるアクリルアミドが検出されたと発表しました。

この発表を受けてノルウェー、スイス、英国、米国でも追試が行われましたが、スウェーデン当局の発表と同じような実験結果が得られたことで、急遽、国連食糧農業機関(FAO)と 世界保健機関(WHO)の共同主催によるアクリルアミドに関する専門家会議が2002年6月に開催されました。

その後、多くの研究機関でアクリルアミドに関する研究が進められ、9月にはカナダ及び米国の研究者により、アスパラギンと還元糖が高温下で反応してアクリルアミドが生成されることが解明されました。また、イギリス及びスイスの研究者も同様の生成メカニズムを科学雑誌「ネイチャー」10月3日号で報告しました。

 
2. アクリルアミドとは

アクリルアミド(acrylamide)とは、CH2=CHCONH2(分子量:71.08)の構造をもつ化合物です。無色結晶で、融点は85.5℃。CAS登録番号は79-06-1です。

工業的には塩化アクリロイルとアンモニアをベンゼン溶液中で反応させるか、アクリロニトリルを硫酸あるいは塩酸で処理することによって得られます。水、エタノール、エーテル、クロロホルムに可溶です。紫外線、熱、ラジカル重合開始剤によって重合し、水に不溶のポリマーを形成します。低温重合により、高重合度の水溶性ポリマーも合成できます。また、γ線の照射により固体のまま重合します。ポリマー(ポリアクリルアミド)は、接着剤、分散剤、塗料、紙や繊維などの仕上げ剤、凝集沈殿促進剤などに用いられます。

アクリルアミド単量体は毒性が強く、マウスに対する50%致死量LD50は170mg/kg(腹腔内)で、皮膚からも吸収され、中枢神経麻痺症状を引きおこすとされています。また、動物実験の結果から、人に対しても発がん性を示すと考えられています。

WHOの飲料水の品質に関するガイドラインでは、飲料水1リットルあたり0.5マイクログラムを許容範囲としています。

(参考資料:「岩波 理化学辞典・第5版(岩波書店)」、「国際化学物質安全性カード」、他)

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3. FAO/WHO合同専門家会議の報告書要約

2002年6月25日から27日の3日間、スイス・ジュネーブのWHO本部でアクリルアミドに関するFAO/WHO合同専門家会議が開催されました。この会議には世界各国から23名の科学者が参加し、アクリルアミドに関する今後の取り組みについて検討 しました。会議終了後に発表された要約は以下のようなものです。


<エグゼクティブ・サマリー>

食品中のアクリルアミドと健康の関係に関するFAO/WHO専門家会議は、アクリルアミドに関する新規及び既存のデータや研究の予備的評価を行った。主な結論は以下のようなものであった。

アクリルアミドの分析方法

現状の分析技術の水準から、最近の食料品からのアクリルアミドの検出は信頼できる。食料品中のアクリルアミドを測定するのに用いられた方法で、研究室間の共同試験で十分に検証された方法はいまのところない。しかしながら、ほとんどの方法は単一研究室(研究室内)検証及び認定の要件を満たしている。

食品中のアクリルアミドの生成と消長

アクリルアミドは高温で調理加工されたある種の食品に見いだされ、そのレベルは加熱時間とともに増加する。しかしながら、アクリルアミドの生成メカニズムはよく分かっていない。

暴露評価

得られたデータから、食品が一般の人々に対するアクリルアミドの暴露に重要な役割を果たしていると考えられた。一般な人々の平均摂取料量は0.3 - 0.8 μg/kg体重/日と推定された。人々のなかでも、子供は体重ベースで表した場合大人の2倍から3倍の摂取量であろうと推察された。消費者によってはアクリルアミドの食餌からの摂取量は平均より数倍高くなる可能性がある。

非癌性毒性

神経毒性はヒトと動物においてアクリルアミドの非癌性及び非遺伝毒性影響のカギとなる。食品中に見いだされるアクリルアミドのレベルから予想される神経毒性の影響は不明である。

遺伝毒性

アクリルアミドは遺伝的損傷を誘発すると考えられる。

発癌性

アクリルアミドは食品中の他の発癌物質と類似したラットに対する発癌性を有しているが、アクリルアミドの摂取レベルはもっと高そうである。人に関して、食品中の発癌物質の相対的作用強度は不明である。アクリルアミドに関するデータは限られたヒト集団のものしかなく、これらのデータは職業性暴露からの癌のリスクの証拠を与えるものではない。これらの研究は腫瘍発生率における微増を発見するといった、限られたものであった。専門家会議は、実験動物にガンや遺伝的変異を誘発しうる事を踏まえて、食品中のアクリルアミドの存在をヒトに係わる重要な関心事のひとつとして認知した。

さらなる情報の必要性と暫定的勧告の提供

専門家会議は、食品中のアクリルアミドによってもたらされる人の健康に対するリスクをより理解するためのさらなる情報や新たな研究に係わるさまざまな勧告を提供した。また、専門家会議は存在するいかなるリスクをも最小にするために、食品の必要以上の調理を避ける*、健康的な食べ物を選ぶ、食品中のアクリルアミドのレベルを下げるための可能性を探る、食品中のアクリルアミドに関する国際的なネットワークを設立する、等を盛り込んだいくつかの助言を提供した。

* しかしながら、全ての食品(特に肉や肉製品)は食中毒菌を
死滅するために十分調理されなければならない。


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4. アクリルアミドに関する日本及び各国の情報

アクリルアミドに関する日本及び各国の情報は、下記のリンク先から入手できます

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
英国食品安全管理局(FSA)のアクリルアミドに関するQ&A
欧州委員会のアクリルアミドに関するレポート集
米国食品医薬品局(FDA)のアクリルアミドに関する行動計画

 
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